記号 ∊ の使い方と意味

集合論の言葉を使うにあたって、その中でもっとも (ある意味で唯一の) 特徴的な記号 ∊ の使い方と意味のとらえ方を確かめる。後に導入される集合のルール (公理) もこの記号を用いて記述されるのでこの記号は使えるようにしたい。

記号 $\in$ の使い方

集合論の言葉には $\in$ という記号が使われるが、この記号がないと集合論が始まらない。そこで、まずはこの記号の使い方を知る必要があるだろう。高校数学ではこの記号を「属する」とか「要素として含む」ことを意味するものとして習う。つまり、\[A \in B\] と書かれれば $B$ は集合であることになり、2つのモノ $A$, $B$ には「AはBに属する」や「Bは要素としてAを含む」という関係があると解釈する。

この考えでおおむね問題ないが、一つだけ注意する点がある。それは、前の記事でも述べたことだが、今から使おうとしている集合論の言葉は『集合だけの論理』でありすべてのモノは集合であるということである。すなわち、上にはモノとして $A$, $B$ が現れたが、$B$ だけではなく $A$ もまた集合である。言い換えると、記号 $\in$ は2つの集合の関係を表す記号であるということになる(この説明は高校数学で習う包含 $\subset$ についてではなく、あくまでも $\in$ についての説明である。後に $\subset$ を定義するが、$\in$ と $\subset$ とは明確に区別される)。

以上のことから、2つのモノ (集合) $A$, $B$ があるとき、その2つには $A\in B$ という関係があったりなかったりする。ここで、$A\in B$ ではないことを $A\not\in B$ と表すことにすれば、$A$, $B$ がどんなモノ (集合) であっても $A\in B$ と $A\not\in B$ のどちらか一方のみが必ず成立する。どういうときに $A\in B$ となってどういうときに $A\not\in B$ となるかは、今後導入していく集合のルール (公理) からわかる。

記号 $\in$ の『意味』

さて、ここまでで高校数学では $A\in B$ の意味を「$A$ は $B$ に属する」と捉えると説明したが、このシリーズ内で $\in$ をどのような意味に解釈するかはまだ説明していない。極論を言えば、以降の記事で紹介するルールさえ守れば意味は何でもよい

集合論っぽい日本語を当てはめようとすれば「$A$ は $B$ に属する」と捉えるのが自然かもしれないが、じつは「$A$ は $B$ に愛される」でも「$A$ に $B$ は勝てない」でも、とにかく2つのモノの関係なら何でもよい。そして、『モノ』に当てはめる日本語も「集合」である必要はない。したがって、2つのモノの関係 $A\in B$ を高校数学っぽく「2つの集合 $A$, $B$ について、$A$ は $B$ に属することを意味する」と解釈してもよいし、先ほどの例を使って「2人の人 $A$, $B$ について、$A$ は $B$ に愛されることを意味する」と解釈してもよい。

結局のところ、論理は意味に左右されないので、どんな日本語を割り当てても (英単語でもあなただけが使う単語でもよい) 問題はない。ただ、わざわざ高校数学と違う単語を割り当てて混乱させる必要はないので、このシリーズでは高校数学と同様に $A\in B$ を「$A$ は $B$ に属する」とか「$A$ は $B$ の要素である」と翻訳することにする。

余談だか、記号 $\in$ を「愛する」と解釈するアイデアはニコニコ動画で公開されている動画から拝借した (私が作った動画ではない)。公理的集合論 (主にZFC公理系) についてボイスロイドを使ってわかりやすく解説されているので興味があればシリーズ最初の動画から見てみてほしい。