集合論の言葉による列・数列の表現

前回は写像を集合論の言葉で定義し、使えるようにした。実は数列は写像を使って簡単に定義できるので、ここで定義してしまうことにする。

有限列

列とは、モノの並びである。特に数を並べたものを数列と呼び、実数を並べたものは高校数学で数列として習う。例えば\[1,3,5,7,9,11\]はモノが並んでいるので列であるし、数が並んでいるので数列である。この列の0番目にあるのは $1$ であり、1番目にあるのは $3$ であり、5番目にあるのは $11$ である (注: このシリーズでは自然数は0から始まるので、先頭は0番目である)

ここで上の数列の特徴を言葉を変えて述べると、「0から5の自然数を与えると自然数が一つだけ返るモノ」と見なすこともできる。たとえば 0 を与えると 0 番目のモノである 1 を返し、5 を与えると 5 番目のモノである 11 を返す。ということは、この数列は $\{0,1,2,3,4,5\}$ から $\omega$ への写像と見なすことができる。自然数の定義より $6=\{0,1,2,3,4,5\}$ であるので、$6$ から $\omega$ への写像と言ってもよい。

この例のように、列は写像と見なすことができる。集合論の言葉では写像がすでに定義できているので、これを利用して列も定義してしまおう。

定義$n\in\omega$ とし、$C$ を集合とし、$f:n\to C$ とする。このとき、$f$ はである。とくにこの列は $C$-列であり、有限であり、$n$ を $f$ の項数とよぶ。

この定義の例を見てみよう。$a:6\to\omega$ を\[a(0)=1,\;a(1)=3,\;a(2)=5,\;a(3)=7,\;a(4)=9,\;a(5)=11\]で定めると、有限列の定義より、$a$ は項数が 6 の有限列ということになる。なお、写像 $f$ が列であるときは $f(i)$ のことを $f_i$ と書くことが多く、この書き方で上の式を書くと\[a_0=1,\;a_1=3,\;a_2=5,\;a_3=7,\;a_4=9,\:a_5=11\]となる。また、この列 $a$ 自体の書き方もいろいろあり、\[(a_i)_{i\in 6},\;\;(a_i)_{i=0,1,2,3,4,5},\;\;(a_i \mid i\in 6)\]といった表し方がある。

無限列

上では有限の項数をもつ列を定義したが、高校数学レベルでは無限に続く列も扱ったはずだ。そこで、終わりのない列も定義しておく。

「終わりがない」ということは「$n$ がどんな自然数であっても $n$ 番目が存在する」と言い換えられる。つまり、写像として表現すれば自然数を与えるとモノが一つだけ返るモノが無限列ということになるだろう。

定義$C$ を集合とし、$f:\omega\to C$ とする。このとき、$f$ はである。とくにこの列は $C$-列であり、無限である。

たとえば写像 $S:\omega\to\omega$ を $x\mapsto x\cup\{x\}$ で定義すれば $S$ は無限列である。$S_0=1$, $S_1=2$ であり、最初から順に項をかき出せば\[1,2,3,4,5,6,\dots\]となり、$S$ は高校数学で「初項が1で公差が1の無限等差数列」と呼んでいたものである。

列の相等

シリーズ内の記事でも述べたように、モノ同士がどういうときに等しいかはよく把握していなければならない。そこで、列同士が等しいとはどういうことかを確認しておく。基本的には外延性の公理に従うわけだが、列は写像として定義したので写像同士の相等と同じようにとらえればよい。写像の場合、定義域が異なれば異なる写像であったので、列 $a$ と $b$ の場合は $a$ と $b$ の項数が異なれば $a\neq b$ ということになる。また、写像 $f$ と $g$ の場合は $f(x)\neq g(x)$ となる $x$ があるなら異なる写像であったので、列 $a$ と $b$ の場合は $a_i\neq b_i$ となる自然数 $i$ があるなら $a\neq b$ ということになる。そして、いずれにも当てはまらなければ等しいということも写像と同様である。

列からなる集合

$x$ から $y$ への写像だけがすべて属する集合は存在して、$\text{Map}(x,y)$ や $y^x$ のように書くのであった。ここから、列の集合も考えることができる。

$n\in\omega$ であるときの $n$ から $C$ への写像を項数 $n$ の $C$-列と呼ぶのだから、「項数 $n$ の $C$-列だけがすべて属する集合」は $\text {Map}(n,C)$ や $C^n$ と表せることになる。たとえば上で例示した有限列 $1,3,5,7,9,11$ は $\omega^6$ に属している。

無限列についても同様で、「無限 $C$-列だけがすべて属する集合」は $\text{Map}(\omega,C)$ や $C^\omega$ と表せる。

列の並べ替え

実は、列の並べ替えも写像として表現できる。そのことを説明していく。

例えば、上で作った無限数列 $S$ は値を先頭から順に書き出すと\[1,2,3,4,5,6,\dots\]となるが、0番目と1番目を入れ替えることで\[2,1,3,4,5,6,\dots\]という新たな無限数列 $S':\omega\to\omega$ を作ることができる。この新たな列 $S'$ の特徴を言葉で説明すると、

  • 0を与えると、元の数列 $S$ に 1 を与えたときに返るモノが返る
  • 1を与えると、元の数列 $S$ に 0 を与えたときに返るモノが返る
  • それ以外の自然数 $n$ を与えると、元の数列 $S$ に $n$ を与えたときに返るモノを返す
となっていて、まるで $S$ に与えるモノがすり替えられているようである。つまりこのすり替えこそが並び替えなのである。より具体的には、
  • 0は1にすり替え
  • 1は0にすり替え
  • それ以外の自然数 $n$ は $n$ のままにする
ことが、今回例示した並び替えである。そして、この並び替え (すり替え) 自体も写像と見なすことができる。つまり、この並び替えは
  • 0を与えると1が返り
  • 1を与えると0が返り
  • それ以外の自然数 $n$ を与えると $n$ が返る
ような写像なのである。

さらに並び替えの適用は、写像の合成で表現できる。上で例示した並び替え (すり替え) を $\sigma:\omega\to\omega$ としよう。このとき、列 $S$ に並び替え $\sigma$ を適用してできた新たな数列 $S'$ は、写像の合成 $S\circ \sigma$ である。そのことを確認していこう。\[(S\circ \sigma)(0)=S(\sigma(0))\]であるから、$S\circ \sigma$ に 0 を与えると、まず $\sigma$ に 0 を与えて 1 が返り、その 1 を $S$ に与えることになるので、$S_1$ である 2 が返る。まさに $S$ に与える自然数が $\sigma$ によってすり替えられているのがわかるだろう。その結果、$S\circ \sigma$ が返すモノは最初に例示した $S'$ と同じモノになる。

このように、無限列の並び替えは $\omega$ から $\omega$ への全単射として表すことができる。同様に、項数 $n$ の有限列の並び替えは $n$ から $n$ への全単射として表すことができる。こうして全単射のことを並び替えとしてとらえることができるが、特にそのような意味を込めて、$n$ から $n$ への全単射のことを置換とよび、置換からなる集合\[\{f\in\text{Map}(n,n) \mid \text{$f$ は全単射}\}\]を対称群とよぶ。

もし全単射でない写像を適用する場合、並び替えだけでなく、項の複製か消失も起こることになる。たとえば $\sigma(0)=\sigma(1)=0$ であり、0でも1でもない $n$ に対して $\sigma(n)=n$ とすると、列 $a:\omega\to C$ に $\sigma$ を適応してできる列 $a\circ\sigma$ は\[a_0,a_0,a_2,a_3,a_4,a_5,a_6\dots\]となり、$a_0$ が複製されて $a_1$ が消失することがわかる。

列を定義した今、以前棚上げした組も簡単に定義できる。組とは順序対を拡張したようなもので、複数のモノが順序付けられて1つのモノを成している。例えば三次元空間上の座標 $(x,y,z)$ は3つの実数が成す組である。見かたを少し変えると、この例は 3 つのモノの並びであるので、今回扱ってきた「項数が3の有限列」そのものである。

だから、たとえば順序対を拡張するような意図で $(1,3,5)$ という組を使いたければ、有限列 $1,3,5$ を使えばよい。つまり、\[0\mapsto 1,\;1\mapsto 3,\;2\mapsto 5\]となる写像を使えばよい。

このように、列は組としてみなすことができる。逆に、列を組のように表記することもある。たとえば有限列\[1,3,5,7,9,11\]のことを\[(1,3,5,7,9,11)\]と書いたりする。