級数の絶対収束

数列と級数

この記事では無限実数列について扱う。無限実数列とは自然数集合 $\boldsymbol{\rm N}$ から実数集合 $\boldsymbol{\rm R}$ への写像のことである。$a$ が無限実数列であるとすると、どんな自然数 $n$ に対しても $n$ 番目の項 $a(n)$ が定まる。$a(n)$ のことを $a_n$ とも書き、無限数列 $a$ のことを $(a_n)_n$ とも書く。一般項を書いて例えば $(3n+1)_n$ のように書いてもよいとする (この例は初項1で公差3の等差数列となる)。

定義$(a_n)_n$ を無限実数列とする。極限\[\lim_{n\to\infty} \sum^n_{k=0} a_k\]が存在するとき、その極限を $(a_n)_n$ の級数とよび、$\sum a$, $\sum a_n$, もしくは\[\sum^\infty_{n=0}a_n\]と書く。

この定義より、$(a_n)_n$ の級数は数列 $(\sum^n_{k=0}a_k)_n$ の極限と考えることができる。こう考えれば級数も数列の極限であるので、数列の極限に関して既に得られている命題を級数に適用することができる (例えば以前の記事の命題も)。したがって、以下に示す補題も級数にも適用でき、絶対収束にまつわる命題の証明に使用する。

補題$(a_n)_n$ を極限を持つ無限数列とし、写像 $f:\boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$ が任意の自然数 $n$ に対して $n\leq f(n)$ であるとする。このとき\[\lim_{n\to\infty}a_n = \lim_{n\to\infty}a_{f(n)}\]

(証明) まず、$(a_n)_n$ が収束するとして\[\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\]となるときを考える。ここで $\varepsilon$ を正実数とすると、ある自然数 $N$ が存在して、$N$ を超える任意の自然数 $n$ について\[|\alpha - a_n|\lt\varepsilon\]であり、このとき $N\leq n\leq f(n)$ より\[|\alpha - a_{f(n)}|\lt\varepsilon\]だから\[\lim_{n\to\infty}a_{f(n)} = \alpha\]である。

次に、$(a_n)_n$ が正の無限大に発散するとする。ここで $K$ を正の実数とすると、ある自然数 $N$ が存在して、$N$ を超える任意の自然数 $n$ について\[a_n\gt K\]であり、このとき $N\leq n\leq f(n)$ より\[a_{f(n)}\gt K\]だから\[\lim_{n\to\infty}a_{f(n)} = \infty\]である。

$(a_n)_n$ が負の無限大に発散する場合も同様である。

補題$(a_n)_n$ を単純増加な無限数列とし、写像 $f:\boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$ が任意の自然数 $n$ に対して $n\leq f(n)$ であるとする。$(a_{f(n)})_n$が極値を持つならば\[\lim_{n\to\infty}a_n = \lim_{n\to\infty}a_{f(n)}\]

(証明) まず、$(a_{f(n)})_n$ が収束するとして\[\lim_{n\to\infty}a_{f(n)}=\alpha\]となるときを考える。ここで $\varepsilon$ を正実数とすると、ある自然数 $N$ が存在して、$N$ 以上の任意の自然数 $n$ について\[\alpha-\varepsilon\lt a_{f(n)}\lt \alpha+\varepsilon\]である。 このとき\[\alpha-\varepsilon\lt a_{f(N)}\]である。ここで、$n$ を $f(N)$ 以上の自然数とすると $f(N)\leq n\leq f(n)$ であるので $a$ の単純増加性より\[a_{f(N)}\leq a_n \leq a_{f(n)}.\]いま $N\leq f(N)\leq n$ より上述の $a_{f(n)}\lt \alpha+\varepsilon$ が成立しているので\[\alpha-\varepsilon\lt a_n\lt \alpha+\varepsilon\]でありすなわち\[\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha.\]

次に、$(a_{f(n)})_n$ が正の無限大に発散するとする。ここで $K$ を実数とすると、ある自然数 $N$ が存在して\[a_{f(N)}\gt K\]であるので、$n$ を $f(N)$ 以上の自然数とすると $a$ の単純増加性より\[a_n\geq a_{f(N)}\gt K.\]よって\[\lim_{n\to\infty}a_n=\infty.\]

次に、$(a_{f(n)})_n$ が負の無限大に発散するとする。ここで $K$ を実数とすると、ある自然数 $N$ が存在して、$N$ 以上の任意の自然数 $n$ について\[a_{f(n)}\lt K\]であり、このとき $n\leq f(n)$ と $a$ の単純増加性より\[a_n\leq a_{f(n)}\lt K.\]よって\[\lim_{n\to\infty}a_n=-\infty.\]

補題$(a_n)_n$ を単調増加な無限数列とし、$\{a_n\}_n$ が空でない上界を持つとする。このとき $(a_n)_n$ は収束する。

(証明) 任意の正整数 $\varepsilon$ に対して、$\{a_n\}_n$ の上界に属する $K$ と $\{a_n\}_n$ に属する $a_N$ が存在して\[0\leq K-a_N \lt \varepsilon.\]ここで、$N$ を超える任意の2つの自然数 $n\leq m$ について、$a$ の単調増加性と上界の性質より\begin{eqnarray} K\gt a_m\geq a_n \geq a_N \end{eqnarray}であるから\begin{eqnarray} 0\leq a_m-a_n &=& (K-a_n)-(K-a_m)\\ &\lt& \varepsilon - 0 \\&=&\varepsilon . \end{eqnarray}したがって $(a_n)_n$ はコーシー列であり、実数の連続性より収束する。

絶対収束の定義

級数はある種の極限であるので、収束や発散を通常の数列の極限と同様に考えることができる。級数についてはさらに絶対収束というものも考える。

定義$(a_n)_n$ を無限実数列とする。級数 $\sum a_n$ が有限の値であるとき、級数 $\sum a_n$ は収束するという。

定義$(a_n)_n$ を無限実数列とする。極限\[\lim_{n\to\infty} \sum^n_{k=0} |a_k|\]が収束するとき、あるいは同じことだが数列 $(|a_n|)_{n}$ の級数が収束するとき、級数 $\sum a_n$ は絶対収束するという。

絶対収束と収束

実数は完備であるので、級数の絶対収束は級数の収束よりも強い条件である。つまり、以下の命題が成立する。

命題$(a_n)_n$ を無限数列とする。$\sum a_n$ が絶対収束するとき、$\sum a_n$ が収束する。

(証明) $\sum a_n$ が絶対収束するとき、ある有限値 $\alpha$ が存在して \[\lim_{n\to\infty} \sum^n_{k=0}|a_k|=\alpha.\]ここで数列 $(a^+_n)_n$ と $(a^-_n)_n$ を\begin{eqnarray}a^+_n &=& \max(a_n, 0)\\ a^-_n &=& \max(-a_n, 0)\end{eqnarray}と定義する。このとき任意の自然数 $n$ に対して\[0\leq a^+_n \leq |a_n|,\;\;\;0\leq a^-_n\leq|a_n|\]であり\[a_n=a^+_n-a^-_n\]である。したがって、補題と別の記事より\[ 0\leq \sum a^+_n \leq \alpha\\0\leq \sum a^-_n\leq\alpha\\ \sum a_n = \sum a^+_n - \sum a^-_n \]であるから\[-\alpha \leq \sum a_n \leq \alpha \]となり $\sum a_n$ は収束する。

この証明で用いた $a^+_n$ と $a^-_n$ はルベーグ積分の文脈でも用いられるようであり、絶対収束について述べる中で度々登場するだろう。

項の入れ替え

数列は、その項を入れ替えて別の数列を作ることができる。より厳密には、$a:\boldsymbol{N}\to\boldsymbol{R}$ を無限実数列として $\sigma: \boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$ を全単射とすると、写像の合成である $a\circ \sigma: \boldsymbol{N}\to\boldsymbol{R}$ も無限実数列となり、数列 $a$ の項を入れ替えてできる数列となる (詳しくは別の記事を参照)。

まず、有限個の項の入れ替えについて次のことが成立する。

命題$(a_n)_n$ を無限数列とする。$(a_n)_n$ の有限個の項を入れ替えてできる数列の級数は $(a_n)_n$ の級数に一致する。

(証明) 有限個の項の入れ替えを全単射 $\sigma: \boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$ で表現する。入れ替えられる項は有限個なので、ある自然数 $N$ を超える任意の自然数 $n$ に対して $\sigma(n)=n$ である。このとき、有限個の項 (第0項-第$N$項) の和は結合的で可換であるので\begin{eqnarray}\sum^N_{k=0} (a\circ\sigma)_k &=& \sum^N_{k=0} a_k \end{eqnarray}であり、$N$ を超える任意の $n$ について $a_n=(a\circ\sigma)_n$ だから\begin{eqnarray}\sum^n_{k=0}(a\circ\sigma)_k &=& \sum^N_{k=0}(a\circ\sigma)_k + \sum^n_{k=N+1} (a\circ\sigma)_k \\ &=& \sum^N_{k=0}a_k + \sum^n_{k=N+1}a_k \\ &=& \sum^n_{k=0} a_k\end{eqnarray}である。

以上より十分大きい $n$ に対して $\sum^n_{k=0}a_k$ と $\sum^n_{k=0}(a\circ\sigma)_k$ が一致するので、この2つの極限は等しい。

項の入れ替えが無限にある場合はこれは一般には成立しない。しかし、絶対収束するならばという条件をつければ無限個の項の入れ替えについても同様のことが言える。その証明のために、まず非負実数列について証明する。

補題$(a_n)_n$ を無限数列とし、任意の自然数 $n$ に対して $a_n\geq 0$ とする。このとき、$(a_n)_n$ の項を入れ替えてできる数列の級数は $(a_n)_n$ の級数に一致する。

(証明) 項の入れ替えを全単射 $\sigma: \boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$ で表現する。ここで、新たに写像 $f: \boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$, $g: \boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$ を\begin{eqnarray}f(n)&=&\max\{\sigma(k)\mid k\in\{0,\dots,n\}\}\\ g(n) &=& \max\{\sigma^{-1}(k)\mid k\in\{0,\dots,n\}\}\end{eqnarray}と定義する。このとき任意の自然数 $n$ に対して\[n\leq g(n)\leq f(g(n))\\ A_n=\{a_0,\dots,a_n\}\subset\{(a\circ\sigma)_0,\dots,(a\circ\sigma)_{g(n)}\}= A^\sigma_n\\A^\sigma_n=\{(a\circ\sigma)_0,\dots,(a\circ\sigma)_{g(n)}\} \subset \{a_0,\dots,a_{f(g(n))}\}=A_{f(g(n))} \]となる。数列 $a$ の各項は非負であり、有限個の項の和は結合律と交換律を満たすので任意の自然数 $n$ に対して\begin{eqnarray}\sum^n_{k=0}a_k &=& \sum_{x\in A_n}x \\&\leq& \sum_{x\in A_n}x + \sum_{x\in A^\sigma_n\setminus A_n}x \\ &=& \sum_{x\in A^\sigma_n}x \\&=& \sum^{g(n)}_{k=0}(a\circ\sigma)_k, \end{eqnarray}\begin{eqnarray}\sum^{g(n)}_{k=0}(a\circ \sigma)_k &=& \sum_{x\in A^\sigma_n}x \\&\leq& \sum_{x\in A^\sigma_n}x + \sum_{x\in A_{f(g(n))}\setminus A^\sigma_n}x \\ &=& \sum_{x\in A_{f(g(n))}}x \\&=& \sum^{f(g(n))}_{k=0}a_k \end{eqnarray}であるから\[\sum^n_{k=0}a_k\leq \sum^{g(n)}_{k=0}(a\circ\sigma)_k \leq \sum^{f(g(n))}_{k=0}a_k\]であり、補題より\[\lim_{n\to\infty}\sum^n_{k=0}a_k=\lim_{n\to\infty} \sum^{f(g(n))}_{k=0}a_k\]であるからはさみうちの定理より\[\lim_{n\to\infty}\sum^{g(n)}_{k=0}(a\circ\sigma)_k = \lim_{n\to\infty}\sum^n_{k=0}a_k.\]この左辺について補題より\[\lim_{n\to\infty}\sum^{g(n)}_{k=0}(a\circ\sigma)_k=\lim_{n\to\infty}\sum^n_{k=0}(a\circ\sigma)_k\]であるので\[\lim_{n\to\infty}\sum^n_{k=0}(a\circ\sigma)_k = \lim_{n\to\infty}\sum^n_{k=0}a_k.\]

命題$(a_n)_n$ を無限数列とする。$\sum a_n$ が絶対収束するとき、$(a_n)_n$ の項を入れ替えてできる数列の級数は $(a_n)_n$ の級数に一致する。

(証明) すでに示したように級数が絶対収束するときは収束するので、ある有限値 $\alpha$ に対して\[\sum^\infty_{n=0}a_n = \alpha.\]ここで項の入れ替えを全単射 $\sigma: \boldsymbol{N}\to\boldsymbol{N}$ で表現し、数列 $(a^+_n)_n$, $(a^-_n)_n$, $((a\circ\sigma)^+_n)_n$, $((a\circ\sigma)^-_n)_n$ を\begin{eqnarray}a^+_n &=& \max(a_n, 0)\\ a^-_n &=& \max(-a_n, 0)\\(a\circ\sigma)^+_n &=& \max((a\circ\sigma)_n, 0)\\ (a\circ\sigma)^-_n &=& \max(-(a\circ\sigma)_n, 0)\end{eqnarray}と定める。このとき\begin{eqnarray}(a\circ\sigma)^+_n &=& (a^+\circ\sigma)_n\\ (a\circ\sigma)^-_n &=& (a^-\circ\sigma)_n\end{eqnarray}である。前の命題の証明で示したように\begin{eqnarray}\sum a_n&=&\sum a^+_n-\sum a^-_n\\ \sum (a\circ\sigma)_n &=& \sum (a\circ\sigma)^+_n-\sum (a\circ\sigma)^-_n\end{eqnarray}であり、補題より\begin{eqnarray}\sum (a^+\circ\sigma)_n&=& \sum a^+_n\\ \sum (a^-\circ\sigma)_n&=& \sum a^-_n\end{eqnarray}であるので、\begin{eqnarray}\sum (a\circ\sigma)_n &=& \sum (a\circ\sigma)^+_n-\sum (a\circ\sigma)^-_n \\ &=& \sum (a^+\circ\sigma)_n-\sum (a^-\circ\sigma)_n \\ &=& \sum a^+_n-\sum a^-_n \\ &=& \sum a_n\end{eqnarray}

絶対収束の判定法

上述のとおり、絶対収束する級数は扱いやすいので、手元の級数が絶対収束するかどうかが判定できると便利だろう。その方法を述べる。

定理$(a_n)_n$ を無限数列とする。$(|a_{n+1}/a_n|)_n$ が極限を持ち\[\lim_{n\to\infty}\left|\frac{a_{n+1}}{a_n}\right|\lt 1\]であれば $\sum a_n$ は絶対収束する。

(証明) まず、1より小さい正実数 $\beta$ が存在して、十分に大きい $k$ について $|a_{k+1}|\lt\beta|a_k|$ であることを示す。$(|a_{n+1}/a_n|)_n$ の極限を $L$ とすると $L\lt\beta\lt 1$ を満たす $\beta$ が存在する。そして、正の実数 $\varepsilon'=\beta-L$ に対して、自然数 $N$ が存在して $N$ 以上の自然数 $k$ に対して\[\left|\frac{a_{k+1}}{a_k}\right| \lt L + \varepsilon' = \beta\]であり、このとき\[|a_{k+1}| \lt \beta|a_k|.\]

これを用いると、$N$ を超える自然数 $n$ に対して\begin{eqnarray}\sum^n_{k=0}|a_k| &=& \sum^N_{k=0}|a_k|+\sum^n_{k=N+1}|a_k|\\&\lt&\sum^N_{k=0}|a_k|+|a_{N+1}|\sum^{n-N-1}_{k=0}\beta^k\\ &=& \sum^N_{k=0}|a_k|+|a_{N+1}|\frac{1-\beta^{n-N-1}}{1-\beta}\\ &\lt& \sum^N_{k=0}|a_k|+\frac{|a_{N+1}|}{1-\beta}.\end{eqnarray}したがって数列 $(\sum^n_{k=0}|a_k|)$ は空でない上界を持つ。そのうえ $(\sum^n_{k=0}|a_k|)$ は単純増加であるから補題より収束する。

ダランベールの判定法は、冪級数 $\sum a_nx^n$ の収束半径の判定にも使用される。その用途で使う場合は、証明の部分で $(|a_{n+1}/a_n|)_n$ の極限を 1 未満に限らない正の実数 $L$ とし、$|x|L\lt |x|\beta\lt 1$ とし、途中で出てくる等比級数の公比を $\beta$ から $|x|\beta$ に置き換える。

数学  2018/05/28  k.izumi